遺伝子はダメなあなたを愛してるを読んで鳩胸について考えた

遺伝子はダメなあなたを愛してる (朝日文庫)

鳩胸というのはグラマーなんじゃなくて羽ばたくための胸筋が発達しているということです。

 

鳩胸は、胸のサイズが小さいことだと思っていた。

 

中学にあがったころ、母親と下着売場にいった。

ブラを買うということで、店員さんのいうとおりに試着をすることになってしまった。

仕方なく試着室に入り、つけて、カーテンから店員さんがのぞいて確認する。

なにか話して、そして最後に「鳩胸なんですね。」といってカーテンを閉めた。

鳩胸ってなんだろう。

疑問に思ったけれど、初めて会った大人には聞けなかった。

親に聞いたかどうかも覚えていない。

でも、なにか刺さる感じだった。

結局アルファベット順の手前のサイズのブラを買った。

鳩胸って、胸が小さいことをいうんだろうか。

カーテンからのぞいて、みて、胸が小さいねといった?

こっちは初めて会った大人に見られたんだって。

下着売り場で試着なんて、もうしない。

そしてそのまま、胸のサイズはコンプレックスになった。

 

十数年過ぎて、赤ちゃんを産んだ。

授乳をすると、赤ちゃんの小さな口には実にちょうどいいサイズだと分かった。

自分の胸が役に立っている。

コンプレックスが溶けた気がした。

 

今思えば、「鳩胸」といった店員さんの表情は事務的な感じだったし、悪意なんてもちろんなかったろう。

タイミングが悪かったんだ。思春期、思春期。

通勤途中、横断歩道を渡ったところで、歩道を何匹かの鳩が歩いていた。

歩く度に 頭 が前後のゆれている。

頭の下に、首、胸と続く。

ほ乳類じゃないから人間でいう「胸」なんてない。

小さな頭と比べたら、首が太く、胸らしき箇所はしまっている。

鳩は1千キロ離れた場所からでも自分の巣に帰りつけるらしい。

あの体つきで一千キロ飛べるんだ。

鳩胸、すごい。

わたしにとって「鳩胸」は「1千キロ飛ぶ鳩の胸」になった。